インプラント治療は、失った歯の部分の顎の骨に人工歯根を入れて代替する効果的な方法です。しかし、「骨がない場合インプラント治療はできないのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。実際には、骨が少ない場合でもインプラント治療が可能な場合が多く、さまざまな方法で骨をつくることができます。
●骨が足りない場合のインプラント治療
インプラント治療を成功させるためには、十分な骨量と骨質が必要です。骨が不足していると、インプラントの固定が不十分になり、長期的な安定性が損なわれる可能性があります。しかし、現代では、骨が少ない場合でもインプラント治療を行うための技術が発展しています。
●骨を作る治療法
①GBR(骨誘導再生法)
GBR(Guided Bone Regeneration)は、骨誘導再生法とも呼ばれ、インプラントを埋入するために十分な骨の厚みや幅がない場合に行われる治療法です。具体的には、骨の吸収が進んで厚みや幅が不足している箇所に、骨補填剤や細かく粉砕した自家骨(自分の歯骨)を入れ、メンブレンという人工の膜で覆います。このメンブレンは、歯肉などの線維性の組織細胞の混入を防ぐ役割を持ち、内部では骨芽細胞が増殖し、新たな骨が形成されます。これにより、インプラントを安定して埋入するための骨を再生させることができます。
②ソケットリフト
ソケットリフトは、上顎の骨の再生手術の一種で、口腔内から上顎洞底部を持ち上げて隙間を作り、骨移植や再生療法などで骨造成を誘導する治療法です。これは、上顎臼歯部にインプラント治療を行う際に、十分な長さのインプラントを埋入するための垂直的な骨の量が不足している場合に行います。ソケットリフトにより、必要な骨の高さを確保し、インプラントを安定して埋入することが可能になります。
③サイナスリフト
サイナスリフトは、ソケットリフトとは異なり、インプラントを埋入する方向ではなく、顎骨の側面からアプローチする手術法です。具体的には、歯茎を切開し、顎の骨に穴を開けて上顎洞と呼ばれる空洞へ骨補填材を填入します。この手術は、上顎の骨量が不足している場合に行われ、骨の厚みを増やしてインプラントを安定して埋入できるようにします。
●骨がない場合でもインプラント治療を諦めないで
骨の不足がインプラント治療の障害になることは確かですが、現代の歯科医療技術はその障害を克服する方法を提供しています。骨造成、サイナスリフト、ソケットリフトなどの手術により、多くの患者がインプラント治療を受けることができるようになっています。骨が不足している場合、インプラント治療を検討する際には、専門医との相談が不可欠です。歯科医師は、個々の患者の口腔内の状態を詳細に評価し、最適な治療計画を立てます。CTスキャンやX線などを使用して、骨の状態を正確に把握し、適切な治療法を選択します。
骨がない場合でも、インプラント治療を諦める必要はありません。現代の歯科医療技術は、骨造成やサイナスリフトなどの手法を用いて、骨の不足を補うことが可能です。専門医との詳細な相談を通じて、自身に最適な治療法を見つけることが大切です。インプラント治療は、失った歯を取り戻し、快適な生活を再び手に入れるための有力な選択肢です。