皆さんはサルコペニアという言葉をご存じでしょうか。
サルコペニアとは進行性並びに全身に生じる骨格筋量並びに骨格筋力の低下を特徴とする症候群です。サルコペニアが進行すると転倒のリスクが上がったり、ADL(日常生活動作)が著しく低下するといわれています。
口腔状態や口腔機能がサルコペニアを含む全身の運動機能に重要な因子であるという報告が近年増えています。
なぜ口がサルコペニアに影響するのかは、口腔機能の低下が栄養摂取に及ぼすため、また口腔内の炎症が全身の炎症に関係する可能性が考えられています。いずれにせよ口腔の健康はサルコペニアを含む全身の運動機能低下ににおいても重要な因子であるとする報告が多数あります。
本日は入れ歯と運動機能に関連した論文を2つほど紹介します。
①入れ歯を装着していない人は転倒リスクが高い(1)
Yamamotoらによると、転倒経験のない65歳以上の1763名を追跡調査し、そのうち86名が3年の間に転倒を経験した。歯が20本以上あるに比べて、19本以下で入れ歯を使用していない人は転倒が多く(オッズ比:2.5)19本以下でも入れ歯を使用している人は有意な差はなかった。
②入れ歯の不調はサルコペニアと関係がある(2)
Iwasakiらは、75歳以上の276人を対象にサルコペニアと口腔状況また入れ歯の使用者については入れ歯の状況を調べた。
その結果、かみ合わせが少ない人(オッズ比:3.4)、入れ歯の状態が悪い人(オッズ比:5.1)はサルコペニアの人が多かった。
歯を失ってしまっても、噛めることを維持することは非常に健康に重要です。もし、入れ歯の調子が悪い、歯が多数なくなっているけど放置している人は歯科医院で一度相談することをお勧めします。
当院のドクターは、補綴(入れ歯や被せ物、インプラント)歯科学会専門医、老年歯科医学会専門医ですので、難しい状況でもあきらめずにご相談ください。
(1)Yamamoto T, Kondo K, Misawa J, et al. Dental status and incident falls among older Japanese: a prospective cohort study. BMJ Open. 2012;2(4):e001262.
(2)Iwasaki M, Kimura Y, Ogawa H, et al. The association between dentition status and sarcopenia in Japanese adults aged ≥75 years. J Oral Rehabil. 2017;44(1):51-58.